特別講演

感染病における免疫系とクロストーク

 

                                    東京医科歯科大学 感染免疫病理
                                    廣川 勝c


神経系、内分泌系、免疫系はお互いに相互反応しながら外環境からストレスに対抗するシステムとして働き、固体の内部環境を持続する上で重要な働きを果たしている。ストレスは神経系が窓口となる心理的なものと、免疫系が窓口となる感染病に分けられる。
心理的なストレスは脳に入った後、必ず視床下部に入り、下垂体を通して、免疫系に影響する。
感染症によるストレスは免疫を刺激し、特異抗体やキラー細胞の生成をもたらすが、その際、産生される様々なサイトカインは直接或いは間接に脳に作用し、視床下部を刺激し、免疫系にフィードバックしてくる。

感染時、例えば細菌感染ではエンドトキシンは脳に作用し、様々なサイトカインの受容体の発現を亢進させる。その結果、免疫系で産生されたサイトカインは脳に作用しやすくなり、発熱、混迷などさまざま精神状態を引き起こし得る。

加齢と共に神経・内分泌・免疫の各系の機能が低下し、それに伴い、固体のストレスに対抗する能力も低下する。老齢固体ではストレスにより損傷を受けやすくなり、それからの回復もスムーズにいかなくなる。

感染病における脳のサイトカイン発現の状況も変化し、また、免疫系のサイトカイン産生のパターンも変化する。
その結果、老齢固体では感染時における脳への影響も個体差が極めて多くなる。