田七
人参

中国の雲南省から広西省にかけて、海抜1200〜1800メートルの限られた地域で採れる特産品。
田七は、三七とも呼ばれ、ウコギ科のサンシチニンジンの根を乾燥して用いる。高麗人参の仲間で茎は高麗人参に似ているが、根は黒褐色の紡錘型で非常に固い。
三七とは、薬として利用できるまでに、3年から7年かかるという意味からつけられた。
田七人参は“漆のように傷口を癒合する”ことから「山漆」との別名がある。
ベトナム戦争のときに、ベトナム兵が、田七人参を主成分とした止血剤を使っていたことから、アメリカ軍も使い始めたと言う話もあるくらいである。

  

『本草網目』では、止血作用、おけつを取り除く作用があり、他の効用として、循環器障害、動脈硬化、疲労回復などが書かれている。
肝臓の血液循環をよくする作用があるといわれている。
体内の脂肪代謝を活発にして、肥満予防や改善に効果。
冠状動脈を拡張させる田七ケトンの働きによって、心臓の負担を減らす。
また、血液中のコレステロールを減少させるといわれている。
 

*「片仔廣」(へんしこう)
中国福建省で作られている肝臓疾患に使われている漢方薬。
主成分は田七が85%、麝香3%、牛黄5%、蛇胆7%の組成で作られている。
この薬は、中国における最近の漢方薬系のものでは、最高傑作と言われるぐらい、
肝臓への有効性が伝えられている。

  -讀賣新聞日曜版-『漢方漫歩』-1995/3/12-

“活血と止血を兼ね備える「田七人参」”

雲南白薬(各種出血・打ち身などに)、片仔廣(慢性肝炎などに)といえば、日本人に最もよく知られた中成薬の一つである。この二つの名薬に、共通して含まれている生薬に田七人参(三七人参)がある。雲南省を主生産地とする薬用人参の一種で、中国では循環器疾患、婦人病などに幅広く使用されている。
お金にも代え難い貴重なものという意味で“金不換”という呼び名もある。
漢方処方のなかには、桂枝(発散作用)と芍薬(収斂作用)を組み合わせた桂枝湯のように、相反する作用の薬を組み合わせることによって、処方としての価値を高めているものがある。
一方、田七人参の場合は、同一生薬、同一部分であるにもかかわらず、活血(血行促進)と止血という相反する二つの作用を兼ね備えているのが特徴だ。
出血性の病気では、止血剤を用いて一時的に止血できても、また出血を繰り返す場合がある。このようなときは、黒っぽい血塊が混じるなど、患部に瘡(血の滞り)のあることが多く、瘡撃取り除かないかぎり、完全な止血は難しい。活血と止血、両方の作用をもつ田七人参のような薬物の出番である。
田七人参はほかにも、打ち身・切り傷・鼻血・吐血・産後の悪露をはじめ、胃や十二指腸など、内蔵の出血に幅広く応用できる。また、脂肪の代謝を促進する働きがあって、ダイエットにも使える。そのため、日本では健康食品として幅広く親しまれており、最近は飲みやすいエキスタイプのものも、田七人参茶として輸入されている。

         路 京華(中国中医研究院広安門医院主治医師)