20. 世紀の疫病に勝には

朝日新聞: 2001/6/25

この20年間にエイズウイルスに感染した人は
世界で5600万人を超え、うち2180万人が亡くなった。昨年だけでも死者は300万人に上がる。一方で、530万人が感染した。
世紀をまたいで人類を脅かすこの疫病をどう克服し、ウイルスに感染した人たちの生命や暮らし、人権をいかにして守るか。国連は25日からニューヨークでエイズ特別総会を開き、国際的な行動指針となる政治宣言を採択する事にしている。国連はエイズの拡大阻止、とくに若者の感染を減らし、母子感染を防ぐ事を大きな目標に掲げてきた。感染者と患者の就労機会の確保や、エイズで親を失った孤児、エイズに感染した子供のケアの重要性も強調してきた。にもかかわらず、感染者は増え続けている。治療も行き渡らない。目標達成に必要な行動が遅れているためである。実効ある特別総会にするため、各国とも行動の裏づけを伴う発言に徹してほしい。
感染者の約9割は開発途上国に住み、7割強がサハラ以南のアフリカに集中している。国連の推計では、途上国に於けるエイズ予防や治療などには、先進諸国からの支援、余剰国の政府支出額を合わせて年間90億ドル前後の費用を要する。実際の支出額は年間20億ドる弱に過ぎず、資金不足は覆いがたい。今度の総会を機会に、、エイズ等の感染症対策として世界保健基金(仮名)を創設する準備が進んでいる。できるだけ大きな基金を積み上げるとともに、途上国の要望に配慮した運用方法を採用すべきだと思う。
日本政府は
5年間で30億ドルの感染症対策支援を表明し、実行に移した。欧米の先進国と比べても支援額は多いほうだ。途上国でのエイズ対策は非政府組織(NGO)との連携抜きでは成り立たない。保健施設整備や医療機材提供といった「モノ」の支援にとどまらず、国内外のNGOともっと積極的に協力する必要がある。
エイズのワクチンはまだないが、治療薬の進歩で先進国での死亡率は大きく下がった。ただ、薬代が高すぎて途上国では大半の患者や感染者に届かない。
薬価が高くなるのは欧米の製薬会社が特許を握っているからだ 。自主的に廉価で治療薬をアフリカ諸国へ提供する製薬会社も相次いでいるが、より一般的なルールづくりが必要ではないか。

欧米連合(EU)は
エイズ治療薬については特許保護を弾力的に運用する事を世界貿易機関(WTO)に提案している。それも一案だ。ぜひとも治療薬の普及を図り、感染者が感染前と同じように社会生活を送れる機会を拡大してもらいたい 。
この疫病には、既存の法制の枠を越えて世界中が総力で取り組まない限り、到底勝てない  。そのことを肝に銘じなければならない。