13.実験的医療    

朝日新聞: 2001/2/25/ 

 ヒトゲノム
人の遺伝情報全体)や再生医学など最新の基礎研究の成果を新しい治療法につなげるため、文部科学省は新年度から京都大と東京大に研究拠点を整備する。新薬になりそうな物質が見つかれば患者に役立つかどうかを臨床で確かめる、いわば「実験的な医療」。
患者の安全を確保する必要があり、両大学は安全管理部門を別に設けて患者へのインフォームード・コンセント(十分な説明と同意)を徹底させる。基礎研究の成果を臨床にいかすのは開発型医療と呼ばれ、日本では体制づくりが遅れている。例えば遺伝子治療では、米国でで開発されて安全性のチェックもすんだものを「輸入」することが多かった。
米国では
大学やベンチャー企業、製薬会社が連携し、米国立保健研究所(NIH)が支援して開発型医療をどんどん進めている。今後、画期的な治療法が開発される可能性は高く、国際的な競争が激しくなる。今のままだと日本の研究成果も欧米で臨床に実用化されてからでしか日本で使えないという指摘もある。両大学は、研究拠点の整備によって開発型医療の定着をめざす。京大医学部に設けるのは探索医療センター。医師や研究者らスタッフは十七人前後。研究や治療をする開発部と、安全面や倫理面の検討が専門の検証部をつくる。研究テーマは四月から公募する。

東大医科学研究所では

組織を改革してゲノム診療部と医療安全管理部を設ける。京大と同様に開発と安全管理を分ける。患者の遺伝情報に応じて治療法を変える医療や、がんなどを対象にした独自の遺伝子治療を目指す。ヒトゲノム解読に伴ってがんなどの病気にかかわる遺伝子の研究が進み、病気の仕組みや診断法がわかってくる。病気に関連する免疫や脳の働きも解明されてきた。こうした研究成果を使い、細胞治療や再生医学などが考えられる。新薬を開発する場合、動物実験などを経たうえで臨床試験(治験)で使う量や方法が慎重に決められる。臨床試験は大規模で、新薬として有望という判断を後でないと実施に踏み切れない。両大学で実施するのは治験よりも前の段階の試行的なものになる。

本庶佑・京大教授(前医学部長)

「日本では基礎研究を応用につなげるシステムが欠けていた。これでは国際競争に太刀打ちできない。全国の研究者が利用できるシステムづくりを積極的に進めるべきだ」と話している。