くすりとは
病気をなおすのに役立つ性質を担った物質が薬。病気の治療に限らず、予防、診断に役立つもので、さらに正常の身体の働きをコントロールするものも薬と呼ばれている。

 
 くすりの豆知識
  1. くすりの通り道は

    服用された薬は体内に入って?

    1.薬の成分が胃で溶ける→2小腸で吸収され→3.肝臓に送り込まれる→4.そこで成分がある程度、代謝される→5.血液にのって全身の組織に運ばれる→6.病気が起っているところに到達し、薬として働く。
    役割を果たした薬は、再び肝臓にたどりつき代謝作用を受けて尿や便などと一緒に体外に排出される。
    *注射などは直接、血中に入ったクスリは代謝されずに直接、患部に届くため、作用が強く現れる。

    服用された薬の排出は?
    体内を巡った後、肝臓で再び代謝されたり、腎臓から尿とともに排出されて、薬の血中濃度が下がってくる。それに伴い、薬の働きも薄れる。

  2. くすりの効果とは
    薬はその成分が血中に一定の濃度以上に存在している時に、効果を発揮する。体内において、薬は小腸などで吸収されて、血中濃度はピークを迎えた後、全身を循環するうちに肝臓で代謝されたり、腎臓で排出されるため、血中濃度は時間とともに低下していく。そのために、定期的に新たな薬を補充して薬の血中濃度を一定に保っておく必要がある。
    そういうわけで、処方された薬は、クスリの血中濃度を一定のレベルに保つために、服用回数が指示されている。

  3. くすりの飲み合わせ         
      (例:グレープフルーツ)

    グレープフルーツの中に含まれるフラボノイド成分(ナリンジン)と、高血圧治療薬(ニフェジピン)などの薬物が、肝臓の代謝酵素(チトクロームP-450)を阻害し、薬の代謝分解を遅延して、血液中の薬物濃度が増大することがある。そのため、作用が増強され、過度の血圧低下の症状が認められることがある。といっても、「飲み合わせ」での影響は、軽いもので、グレープフルーツを大量に摂らないようにする事と、これらの薬と同時服用しないことに気をつける事が大切である。

  4. くすりに対する年齢差
    一般に子供は、おとなに比べて感受性が高い。これは、肝臓の薬物代謝酵素がまだ未完成だといううことと、腎機能の低さのせいだといわれる。お年寄りも薬物代謝酵素活性、腎機能が低下しているので投与量を減らす必要がある。

  5. くすりの性差
    一般女性は、男性よりも薬物に対する感受性が高い。
    ラットでは、ヘキソバルビタール、ストリキニーネ、などの薬効や毒性がオスよりメスで強く現れる。

  6. くすりの動物種差
    同じ薬物を投与した場合、動物の種類によって薬効の量的差異や質的差異がみられることがある。
    ヒトやモルモットはヒスタミンに敏感。
    ラットはセロトニンに敏感。

  7. 薬理作用とは
    薬が生体に働きかけて示す作用。

  8. 薬用量とは
    薬の効果を期待して用いる時の量。

  9. 常用量とは
    その薬が最も普通に使われた時に、治療効果の期待できる量。

  10. 極量とは
    通例、その量を超えて用いない量。

  11. プラセボ効果  
    本来、何の効果もない物質(プラセボ、偽薬)を投与しても、医師の暗示などによって効果が現れてしまうことを言う。

  12. 耐性とは
    薬物を長期間繰り返し投与し続けると、だんだん効果が、減弱し、用量を増加しないと同一の効果が得られなくなること。

 
 適用面からの薬の分類

   

適用面から分類  
医薬品 医療用医薬品
一般用医薬品(大衆薬)
治療薬 対症療法薬(鎮痛剤、血圧降下剤、鎮咳薬)
化学療法剤(抗生物質、抗がん剤、抗結核薬)
予防薬 予防ワクチン
診断薬 (エックス線造影剤、臨床検査薬)
環境衛生用薬 (殺虫剤、殺鼠剤、防虫薬)

   

 
 剤型からの薬の分類

  

剤型から分類  
カプセル剤 医薬品を粉末、顆粒、液状などにして、カプセルに入れたもの。
錠剤 薬を一定の形に圧縮して作ったもの。
カブレット カプセルの形をした細長い錠剤。
顆粒剤 薬を粒状におおきさをそろえたもの。
細粒剤 細かい粒状にしたもので、粉薬と呼ばれる。
トローチ 飲み込まずに口の中でゆっくりと溶かすもの。
チュアブル 水なしで噛み砕いたり、口の中で溶かして服用できる錠剤。
エキス剤 生薬などから浸出された薬効成分を濃縮して製造したもの。
シロップ剤 白糖の溶液やその他の糖類、または、甘味剤を加えてのどの通りをよくし飲みやすくした内服薬。
軟膏剤 皮膚に簡単に塗れるようになっている半固形の外用剤。
リニメント剤 普通、泥状や液状でへらなどで伸ばして患部につける外用剤。
ローション剤 水性の液の中に薬を均等に分散させたもの。

 

 
 使い方からの薬の分類

  

使い方で分類  
経口薬 口から飲む薬のことで、胃や腸で溶けて吸収され、血液中に入って、体内をめぐるもの。飲んでから15〜30分で吸収される。
外用剤 皮膚につけることで皮膚から吸収させる貼り薬や、患部に直接塗る軟膏や、目にさす点眼薬や点鼻薬、うがい薬などの液剤などがある。
注射・点滴薬 皮下や静脈などに薬を直接注入するので、吸収が完全で早く、効果も早く現れる。
座薬 主に肛門に挿入して腸管粘膜から吸収されて効果を上げる薬。
うまく薬を飲めない小さな子供や、飲み込む力の弱くなった人に経口薬の代わりに用いられる。
吸入薬 吸入器で薬を口中やのどの方に散布する。
気管支喘息などの治療に用いられると、即効性が高い。

 

 
 薬の飲み方:一般的な飲み方 


原則として、薬は
1.コップ一杯程度の水か、ぬるま湯で飲む。
2.上半身を起こして飲む。
(上半身を起こすと食道が垂直になり薬が通りやすくなる。さらに、水を飲むことで、食道が広がり薬を押し流す働きをしてくれる)

  • 牛乳で薬を?
    薬の吸収を遅くするので一般的には注意が必要。しかし、牛乳は胃粘膜を保護するので、鎮痛剤など胃を荒らす薬に限っては、一緒に飲んでもかまわない場合もある。

 

  • アルコールで薬を?
    原則的には、一緒に飲まないほうがいい。(アルコール自体、薬としての作用があるので、効果が出すぎて、危険になったり、薬の効果が下がったりすることがある。)
    特に、アルコールを避けたい薬:精神、神経系薬物、循環器系薬物。


お酒とお茶(紅茶、コーヒーも含)に関して気をつけること!

  • お酒
    お酒はアルコール性飲料であり、飲むことによってエチルアルコールによる中枢神経抑制作用が働くので、薬を飲んでいる時は、お酒を飲むのを控えてもらいたい。
    中枢神経抑制作用とは
    精神活動においては、高度な精神活動が抑えられて、自制心、節制力が減退してくる。また、知能活動においては、注意力記憶力が衰え、物事への判断が不確実になる一方で連想や表現力が活発になる。そして、感情の面では、疲労感やうつ状態がとれて気分が和らいでくるが、一方で、不安定(笑い上戸、泣き上戸)な状態も見られる。
  • お茶、コーヒー   
    お茶にはカフェインが含まれており、飲むことによって、カフェインによる中枢神経興奮作用が働くので、気をつけて欲しい。
    中枢神経興奮作用とは
    この作用は、コーヒー一杯分(カフェイン200mg)では、眠気や疲労感がとれて、精神活動が活発になり、また気分も爽快になる。しかし、(カフェイン500mg以上)を飲むと、神経が過敏になり、不眠、手足の震え、頭痛などが起ることがある。

薬を飲む時間、回数は
    

食前 食事をする30分前
食後 食事をしてから30分後
食間 食事と食事の間で、食後約二時間と考えて飲む。
一日四回 毎食後と就寝前に一回飲む。
一日一回 時間を指定してあるので、指示どうりに飲む。
  

正しい薬の扱い方は

  1. 市販薬は、説明書をよく読んでから使う習慣をつける。

  2. 服用時間は、薬の効果を考慮して決めてあるものなので必ず守ること。

  3. 用法と用量を守る事。

  4. 素人判断で薬の増減や併用をするのは危険を伴うので避けること。

  5. 2〜3日続けても効果がない時は、薬局に相談する。

  6. お医者さんが処方した他人の薬をもらって飲む事は、危険を伴うので避けること。

  7. 薬は、正しく保管する事。

  8. 古い薬は使わないようにする。


有効期間

抗生物質やワクチンの有効期間は国家検定で定められているが、それ以外の薬は、30℃以下の室温で2〜3年もつものが多い。
薬の効果は、すぐに薬の性質が変るというわけではないので、しばらく使っても大丈夫だが、医師からもらった薬などは、薬が製造されてからどれだけたったか分からないものもあるので、古い薬は使わないほうがいい。
*液体の薬(目薬、点鼻薬、シロップ):開封後は冷蔵庫に入れて、原則的には、直ちに(1〜2ヶ月)使い切るべきです。


薬の副作用

薬の副作用については、前もってある程度、知っておき、副作用が出たら注意するものと、早めに中止するのが望ましいものがある。

  • 鎮痛剤:胃腸障害、腎障害、肝障害、アレルギー
  • 胃腸薬:眠気、口渇
  • 抗ヒスタミン:眠気、頭痛、発疹
  • 抗生物質:胃腸障害、腎障害
  • 利尿剤 :脱水症状。疲労感、起立性低血圧
  • 精神安定剤:ふらつき、めまい、妄想

*特に重要な副作用

  • インシュリン、経口糖尿病薬
    →低血糖
  • ワーフアリン(心筋梗塞の薬)
    →出血
  • リュウマチの薬
    →白血球減少
  • 抗ヒスタミン剤、トランキライザー
    →眠気

副作用らしいものが出たら、医師や薬剤師に相談する。

 
 飲む時に注意が必要な人

薬の説明書に示してある投与量・投与方法は、健康な人のものであるので、子供、お年寄り、妊婦、肝臓・腎臓などの悪い人などは、薬を飲む時は、注意が必要である。
  • 心臓病の人
    :甘草(グリチルリチン酸)

    グリチルリチン酸には、塩分や水分を体に貯めやすいので、長期間の服用はむくみや血圧上昇といった状態を招きやすく心臓に負担をかけることになるので注意する。
    特に、甘草エキスいりの風邪薬には注意が必要。

  • 高血圧の人
    :制酸剤(炭酸水素ナトリウム)
    血圧が高くて塩分制限の指示されている人は、炭酸水素ナトリウム配合の胃薬には気をつける。

  • 腎臓病の人
    制酸剤(炭酸水素ナトリウム)甘草
    腎臓が悪くて、塩分制限の指示されている人は、炭酸水素ナトリウム配合の胃薬には気をつける。
    「胃薬に含まれるナトリウムなら大丈夫」と軽視しないこと。

  • 緑内障の人
    :ロートエキス(胃腸薬、止瀉薬に含)、ブスコバン

    ロートエキスには、副交感神経の働きを抑制して胃液の分泌を少なくし、胃の不快感や痛みを和らげる作用がある。しかし、同時に、体全体の筋肉を緩める作用もあるので、緑内障のある人が飲むと、瞳孔が開いたり、眼圧が上昇して症状が悪化する場合があるので注意する。


お年寄り

  1. 複数の病院に通っている場合は、薬の重複作用、相互作用もあるので、注意する。

  2. 薬が何種類もある時は、一回分ごと渡して飲ませる。

  3. 薬を飲む時は、そばについていてあげる。

  4. お年寄りは、薬の排泄、解毒作用が弱くなっているので、飲む量も減らす。

  5. お年寄りは、薬の副作用がでても外部から分かりずらい事が多いので、気をつける。


妊娠中の人

  1. 勝手に、自分で市販薬などを飲まない。

  2. 酒、タバコは慎む。

  3. お医者さんと相談して、胎児の月齢に応じた安全な薬を飲む。
    *妊娠4〜7週までは
    鎮痛剤、向精神薬、ホルモン、V.A、V.Dの服用を避ける。


子供

  1. 子供の薬の量は、年齢や体重を考えて、用量、用法を正しく守る。

  2. うそを言って飲ませないこと。(お菓子だとかおいしいとか言って飲ませると、後で、勝手に飲んでしまうことがあるので、ある程度納得させて飲ますこと。)

  3. 乳児などは、粉薬を飲まない時もあるので、少量の水、ジュース、アイスクリーム、ヨーグルト、蜂蜜などで溶かして、スプーンでのどの奥の方に、いれてやる。

  4. 粉薬でも、水薬でも、まず母親がしっかり子供を抱き、スプーンやスポイトで少しずつ飲ませる。

  5. 座薬は、先にオリーブ油等を付けて、滑りをよくしてから入れてあげるといやがらない。冷蔵庫から出した後しばらくっ手に持って温め人肌になってから用いる。

 
 「薬」のことわざ集ーNo.1
  1. 合わぬ薬湯、水にも劣る。
    ( 病気の症状に合わない薬は、どんな高価な薬でも水よりも劣って効果がない。)

  2. 一に看病、二に薬
    ( 病気の回復には、薬も欠かせないが、周囲のいき届いた看病が一番大切。)

  3. 薬は匙加減
    ( 薬は量の加減ひとつで人を助けもし、殺しもする。)

  4. 薬より養生
    ( 健康には薬を飲むよりも、日常の養生が大切。)

  5. 薬多なれば病甚だし
    ( 薬を乱用することは健康を損じ、かえって病気を悪化させる。)

  6. 薬から病を起こす
    ( 薬も用い方を誤ると、病気の原因となる。)

  7. 薬は身の毒
    (
    薬をあまりたくさん飲み過ぎれば、かえって体のためにならない。)

  8. 薬無ければ病なし
    ( 薬と病気とは相対的なもので、薬がないと、それに応じる病気もない。)

  9. 薬より看病
    (
    病気に は、薬をあれこれ飲むよりも、心のこもった看病のほうが有効である。)

  10. 酒は百薬の長
    ( 酒は適度に飲めば、多くの薬以上に効果がある。)

  11. 病人の薬喜び
    ( 病人はどんな飲食物よりも薬を喜ぶ。)

  12. 藪医者の薬箱と蛇の足は見たものは無い
    ( やぶ医者の薬は、何を使っているのか分かったものではない。)

  13. 笑いは人の薬
    ( 適度に笑うことが健康のために一番いい。)

  14. 毒薬変じて薬となる
    ( 毒薬も使い方次第で薬になる。)

  15. 年が薬
    ( 年をとるに従って、思慮分別がでてくる。)

  16. 薬も過ぎれば毒となる。
    ( 薬も飲みすぎれば毒となるように、何事もやり過ぎてはいけない。)

  17. 良薬口に苦し、忠言耳に逆らう。
    ( 良い薬は苦くて飲みにくいが、病気のためには優れた効きめがある。忠言は聞いて快いものではないが、その身のためになる。)

  18. 天井から目薬
    ( 効き目が無いことのたとえ。)

  19. 薬は毒ほど効かない
    ( 善い事は、悪いことほどの強い影響力をもたないというたとえ。)

  20. 尻に目薬 
    ( 見当違いのたとえ。効き目があるはずがないということのたとえ。)

 
 「薬」のことわざ集ーNo.2
  1. There is no medicine for fear.
     ( 恐れには薬なし )
  2. Medicines are not meat to live by.
     (薬はいきるための肉とならない )
  3. Laughter is the best medicine.
     (笑いが一番の薬  )
  4. A sound mind in a sound body.
     ( 健全な精神は健全な肉体に宿る )
  5. Better wait on the cook than the doctor.
     ( 医者より養生 )
  6. Much meat, much disease.
     ( 大食は病のもと )
  7. Sickness is felt, but health not at all.
     ( ひとは病気になって、始めて健康に気が付く )
  8. Sickness comes on horseback and departs on foot.
     ( 病はかかりやすく、治しがたし )
  9. An apple a day keeps the doctor away.
     (  一日に一個のリンゴは医者を遠ざける )
  10. An ounce of prevention is worth a pound of cure.
     ( 一オンスの予防は一ポンドの治療に値する。)
  11. What can't be cured must be endured.
     ( 治せないものは我慢しなければならない。)