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漢方薬と民間薬 |
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民間薬(薬草)とは    
ゲンノショウコ、ドクダミのように1種類で、厳しい法則、難しい制限もあまりなく、手軽に使れている生薬類。民間薬は、病気にうまく適合すれば、非常な効果を発揮するが、あまり効果がない場合も多々、ある。(病人の個人差を考慮にいれずに自己流に服用している場合に多い)
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漢方薬とは
生薬のいくつかの種類を、混ぜ合わせて使われ、混ぜる種類、分量、服用の時期や方法に法則や制限がある。漢方薬を構成しているのが生薬であり、生薬を単独で用いても漢方薬とはいえない。何種類かの生薬を決められた比率で決められた方法で煎じて飲んで、初めて漢方薬といえる。例えば、生薬の薏苡仁(ハトムギ)だけを煎じて飲んでも、これは、たんにハトムギ茶を飲んだということである。
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生薬(しょうやく)
天然の産物である動植物や鉱物をあまり手を加えずに、蓄えておき、薬用として使用するもの。明治時代までは、生薬(きぐすり)とよばれた。現在、使われている生薬は、ほとんどが植物性のものである。
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くすりとは
現在、一般的に使われている薬は、いわゆる西洋薬がほとんどである。漢方薬もそれなりの薬理作用もあり薬であることに間違いはなく、漢方薬でどんな病気でも治せるわけでもないが、それぞれの得意な分野を把握し、適材適所にうまく使い分けて使用するのが賢明である。
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漢方治療について |
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漢方治療では、その患者さんの状態にあわせて、心身のバランスを立て直し、病気を改善しようとする。
そのため、同じ病名でも、患者さんによって、異なる漢方薬が処方される場合もある。
つまり、病気に対してではなく、患者さんに対して投薬するのが、漢方の治療方針といえる。
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証(しょう)について
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証とは
病人の自他覚症状のすべてを漢方的なものさしで整理した、漢方薬の使用基準のこと。患者さんと病気の関係を表す“ものさし”であり、効く人と、効かない人を見分けるためと、合わない漢方薬を避けるために用いられる。
証という言葉の意味は
1.症状
2.柴胡の証などのように、生薬の適応
3.葛根湯の証などのように、処方の適応
4.腹証・脈証など治療の目標となる所見
5.実証・虚証など体力・病気をはねかえす力の強弱。
等、いくつかの意味で使われている。
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望診(ぼうしん)・聞診(ぶんしん)・問診(もんしん)・切診(せつしん) |
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漢方では、基本的に五感でとらえる情報を基に、診断を進める。
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望診
目の色や、舌の色、爪の色、顔色や体型を目で見て診断。
舌診→ 舌の色、表面に付着している舌苔で診断。
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聞診
声のはりや、喉から出る呼吸音を聞いたり、痰や排泄物、口臭、呼気臭などをかいだりして診断。
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問診
患者さんにいろいろ質問して、現在の症状に加え、普段の体質、症状、(肩こり、のぼせ、冷え)などを聞き診断。
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切診
患者さんのからだに触れて、脈のリズムを確かる脈診と、お腹を指で押して診断する腹診がある。
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陰陽(いんよう) |
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病気の時間的な進行の状態と、体力と病毒との量的な消長を示す“ものさし”
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虚実(きょじつ)
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体力の質的な充実を表す“ものさし”
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実証とは
体力が充実しすぎた状態。
(病毒が体内にあっても精力、体力が抵抗できる状態)
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虚証とは
体力が少なすぎる状態。
(体内の病毒に対してそれに対抗する精力、体力が乏しくなった状態)
腎虚(じんきょ)とは
主として、老化による腎臓、秘尿生殖器などの機能低下を意味する。
体力の低下、下半身の冷え、視力の低下、耳鳴り、頻尿などの症状。
気虚(ききょ)とは
主に、気が減少、減退した状態を意味する。
疲れやすい、食欲が無い、眠い、気力が無い、めまい、下痢などの症状。
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気・血・水(き・けつ・すい)
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慢性疾患における基礎治療のポイントであるが、あくまでも治療のための概念であり、古人が想定した体の働きを保つための三要素をいう。
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気とは
生命を維持しようとする基本的活力のこと。
目に見えなく、形がなく、働きだけがある。
(消化吸収機能とそれを司る神経系機能)
気虚― 疲労しやすい、倦怠感、意欲低下などの気の異常
気の上衝―頭痛、めまい、のぼせ、顔面紅潮などの気の異常
気鬱― 抑うつ気分、不安感、呼吸困難などの気の異常
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血とは
血液・ホルモン成分などを含めた体液の総称。
(「血」の働きによって気・水の機能を統合し微調整して生命の状態を改善)
血虚― 貧血、皮膚の栄養状態不良などの血の異常
お血― 月経異常や舌や唇の変色などの血の異常
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水とは
体内の水液の総称。
(リンパ、リンパ球を含む免疫機能全体を司る)
水毒― 病気の原因となるような水分のことで、
体内に水分の代謝障害が起った状態。
むくみ、動悸、息切れ、咳や痰、関節痛、水太り、頭痛などの症状。
水剤―水毒をとる薬剤。
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良く使われる漢方処方 |
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症状
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神経性胃炎、慢性胃炎、胃アトニー
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のぼせ気味でイライラ傾向、かゆみ、胃炎
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風邪、肩こり、炎症性疾患、頭痛
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冷え性、月経不順、月経困難、更年期障害
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子宮内膜症、月経不順、更年期障害、冷え性
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口渇、二日酔い、胃内停水、ネフローゼ
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心悸亢進、不眠、高血圧、いらいら
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風邪などの熱性疾患、胃潰瘍、頭痛 |
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口内不快、微熱、急性熱性疾患、肝機能障害
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気管支炎、鼻水、気管支喘息
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全身倦怠感、貧血、寝汗、口内乾燥感
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尿道炎、腎臓炎、排尿痛、残尿管
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のぼせて便秘がち、月経不順、頭痛 |
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月経不順、月経困難、更年期障害 |
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疲労倦怠感、冷え、しびれ、尿量減少 |
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気分がふさぐ、咽喉・食道部に異物感、不安感 |
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良く使われる生薬 BEST 18 |
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生薬
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漢方処方
(210処方中)
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薬用部分
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薬理作用
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1 |
甘草 |
150 |
カンゾウの根 |
解熱、解毒、鎮痙、ステロイド様作用
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2 |
生姜 |
90 |
ショウガの根茎 |
健胃、鎮吐、鎮痙、抗消化性潰瘍 |
3 |
茯苓 |
74 |
マツホドの菌核 |
利尿、抗胃潰瘍、免疫賦活作用 |
4 |
芍薬 |
69 |
シャクヤクの根 |
鎮痛、筋弛緩、駆お血、腹痛、頭痛 |
5 |
大棗 |
67 |
ナツメの果実 |
強壮、利尿、抗アレルギー、抗ストレス |
6 |
桂皮 |
64 |
ニクケイ樹皮 |
発汗、解熱、健胃、鎮静、抗炎症作用 |
7 |
朮 |
61 |
オケラの根 |
健胃、利尿、鎮痛、利胆、発汗作用 |
8 |
当帰 |
55 |
トウキの根 |
補血、駆お血、鎮痛、解熱作用、 |
9 |
人参 |
53 |
オタネニンジンの根 |
補血、強壮、中枢興奮、血糖効果 |
10 |
半夏 |
48 |
カラスビシャクの茎 |
駆水、鎮咳、去痰、鎮吐、鎮痙作用 |
11 |
陳皮 |
44 |
ミカンの皮を乾燥 |
健胃、発汗、鎮咳、抗アレルギー作用 |
12 |
オウゴン |
37 |
コバネバナの根 |
消炎、解熱、利尿、抗アレルギー作用 |
13 |
センキュウ |
35 |
センキュウの根 |
消炎、解熱、月経不順、血の道症 |
14 |
柴胡 |
32 |
ミシマサイコの根 |
解熱、解毒、抗アレルギー、抗炎症作用 |
15 |
大黄 |
28 |
カラダイオウの根 |
消炎、通利、抗菌、瀉下作用 |
16 |
地黄 |
27 |
アカヤジオウの根 |
滋養、鎮痛、利尿、補血、強壮効果 |
17 |
厚朴 |
25 |
ホオノキの幹皮 |
健胃、利尿、鎮静、抗炎症、抗菌作用 |
18 |
枳実 |
24 |
ナツミカンの果実 |
健胃、腹部の膨満感、抗アレルギー作用 |
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漢方薬の剤型(湯・散・丸)
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湯(とう)
配合されている生薬を煎じて飲む「煎じ薬」であることを意味する。
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散(さん)
配合されている生薬を粉末にして服用することを意味する。
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丸(がん)
配合されている生薬を散剤にしてそれを固めて粒状にしたものが丸剤。
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エキス
生薬等から浸出させた薬効成分を、濃縮して製造したもの。
湯(とう) |
煎じ薬
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葛根湯、温清飲、治打撲一方 |
散(さん)
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散剤
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安中散、加味逍遙散
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丸(がん)
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丸剤
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桂枝茯苓丸、八味地黄丸
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エキス |
エキス剤
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黄連解毒湯エキス
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錠(じょう) |
錠剤
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いろいろな漢方錠剤
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膏(こう)
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軟膏
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紫雲膏
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上薬・中薬・下薬 |
「神農本草経」では、薬物(365種)を上・中・下に分類されている。
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上薬
「上薬120種を君となす、命を養うを主る似って天に応ず、無毒にして…」
上薬(上品)は、西洋薬のような切れ味はないが、体質を強化し、他の薬の副作用を軽減する。
主な生薬:人参、甘草、大棗、地黄、五味子、菊花、朮
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中薬
「中薬120種を臣となす、性を養うを主り似って人に応ず、無毒、有毒ならば…」
大量に服用すれば副作用が出るが少量か短期間なら毒性がない。
穏やかな作用で新陳代謝を盛んにして、病気を水際で静止する。
主な生薬:柴胡、葛根、当帰、麻黄、芍薬、乾姜
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下薬
「下薬125種を佐使となす、病を治するを主り似って他に応ず、多毒なれば久服すべからず」
病気を治す作用は強いもののしばしば副作用を伴う。摂取量、摂取期間に十分配慮する。
主な生薬:大黄、附子、半夏、桔梗、夏枯草、黄柏
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君(くん)・臣(しん)・佐.使(さ.し) |
生薬の配合には、一定の法則があり、代表的なものに「君臣佐使」という考え方がある。
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“君”
薬自体は強力な作用をもっていないが、処方全体の作用の方向や副作用の
軽減・消去などに重要な役割を果たす。
主に「上薬」を用いる。
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“臣”
「君」薬の働きを増強する。
主に、「中薬」を用いる。
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“佐・使”
実際に、治療効果の中心をなすもの。
主に、作用の強力な「下薬」に使われる。
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漢方薬の煎じ方 |
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漢方薬の飲み方 |
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煎じて飲む時
煎じて保存してあった漢方薬は、原則的には人肌くらいに温めて1日に三回位に分けて、空腹時に服用する。
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エキス剤を飲む時
温服の場合には、白湯でのみ、冷服の場合には、水で飲む。
白湯でといて、煎液の状態にもどして飲むと吸収は良くなる。
牛乳やお茶で飲むと効きめが弱くなることがあるので注意する。
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子供が飲む時
幼児は大人の四分の一、小学生は三分の一、中学生は二分の一をメドにする。
そして、からだの大きさ、太り具合、体力なども加味して服用する。
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漢方薬の保存法
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漢方薬を保存しておく場合
1.虫のつきやすいもの
(ヨクイニン、桃仁、当帰)
2.カビやすいもの
(地黄、大棗)
3.新しくないと効果が出ないもの
(蘇葉、菊花)等があるので注意が必要。
密封容器か冷蔵庫に保存するのが望ましい。
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良く使われる漢方用語 |
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症 状
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血液が、ウッ帯している状態。
肌が黒ずむ、頭重、肩こり、冷え、便秘、のぼせなどの症状。
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病気の原因となるような水分のことで、体内に水分の代謝障害が起った状態。
むくみ、動悸、息切れ、咳や痰、関節痛、水太り、頭痛などの症状。
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胃の中に水毒が停滞して、みぞおちのあたりをたたくと、ポチャポチャと水の音がするような状態。
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悪寒と発熱が交互に訪れる状態。
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肋骨の下あたりからみぞおちあたりまで張っていて、圧迫すると抵抗があり、圧痛を訴える状態。柴胡剤を用いる。
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浮腫や尿量減少などの時、排尿を促進して体内の水分を是正する薬剤。
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自然に出てくる汗。
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悪寒の軽い状態で、風にあたると寒気がする症状。 |
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尿の減少を伴う熱のこと。
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寒と熱が混在している状態。上半身が熱で下半身が寒であったりする場合もある。
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手足がほてって気分の悪い状態。
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熱を冷まして治療する方法のことで、石膏や知母などが用いられる。
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からえずき
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吐き気をもよしても、何も吐けない状態。
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もだえ苦しむ状態。
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胃腸の熱
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めまい
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煩わしい不快な熱感。
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腹部が全体に張っていること。 |
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生薬の効果を強めたり、毒性を弱くしたり、飲みやすくしたりする目的で調整すること。 |
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一定期間、漢方を服用していると、突然、症状が悪化したようにみえる時期があるが、その時期を過ぎると非常によく改善されてくるという現象。実際は、頻繁に起る現象ではないが、その時は、一人合点せず、医師に診てもらう。 |
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生体に不足したエネルギーを補う働きのある薬剤。(人参、オウギ、地黄) |
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体の余分なものを出してしまう薬。下剤、発汗剤、吐剤。 |
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