『薬草図鑑』                    伊沢 凡人 

  
薬草の大家である、凡人先生身の力作。薬草の誤った情報を是正し、正しい薬物療法の観点で書かれた本。
 「現在のように自然が破壊を余儀なくされた環境下において、たくましく生き続ける薬草
薬木たちの数々は、今改めて私たちに、これらのことについて、無言の主張を投げかけているように思えます。祖先が経験の中から一つひとつ紡ぎだしてきた貴重な知恵を見直し、正しく活かしていくことこそが、今後のわたくしたちの健康をまもっていくうえでの大きなカギになることと思います。」

 

    日本の薬学教育(医療の質を高める薬剤師を)』             林 一  著 

評者:江戸 清人(福島県立医科大学助教授)

著者の林 一氏は2000年3月まで昭和薬科大学の物理学の教授を長らく勤められていた。薬学の非薬剤師教官ではあるが、薬学教育問題にも的確なご指摘をたびたびされてきた。私が医学部(細菌学教室)に勤めていた頃、先生が著わした『薬学の為のアリバイ工作』(海鳴社、1983年)に出会い、衝撃を受けた事を今でも覚えている。この本はその続編といっても良いであろう。

本書には『日本の薬学教育』と非常にかたいタイトルが付けられてはいるが著者の主張は首尾一貫している。すなわち、わが国の薬学とは何か、わが国の薬剤師とは何かを問うている。日本は薬害が絶えない国との認識が国際的には定説であるともいわれてきた。一方、1997年の医療の改定で薬剤師は医療従事者と明記されたが、薬剤師は医療人として顔がまだまだみえてはいないといわれている。その根源には日本の薬学は薬学研究者を養成しているが、薬剤師教育を本気でしていないにではないか、という疑問がある。

この本の中で著者は、明治時代の「正則英語教育(実用英語教育)」をもじって現在のわが国の薬学教育を「正則薬学教育」に変えるべきであると主張している。多くの薬学教育者はまだその問題を直視していないという事である。医療の担い手の一職能として、薬剤師をどのように教育したらよいのか?その疑問に本書は答えてくれる。その内容は、臨床教育を受けていない薬剤師を実務訓練を十分うけていないパイロットにたとえて、その未熟なパイロットが操縦している飛行機に国民は乗っている状態であり、日本の国民はその事に気がついていないことを指摘している(序章、不思議なパイロット養成所)。次に、明治時代に日本に薬学が導入され、現在にいたるまでの他国とは異なった薬剤師教育や、薬学研究の歴史を著者自らの経験も紹介しながら記している。日本の薬学の歴史については、薬学の誕生からはじまり、薬剤師の闘い、日本の薬学・薬剤師には何が不足しているのか、有機化学の中心であった薬学が本当に創薬にやく立ったのかなどについて述べている。
 (第一部:薬学との出会い、第二部:薬学と薬剤師の奇妙な関係)さらに、戦後、日本の薬学運動にはじまり、21世紀に日本の薬剤師教育はどうあるべきか、その展望について述べている(第三部:21世紀の薬剤師教育)

本書は非薬学出身の教官が日本の薬学をどのように見つめてきたかを綴ったみずみずしいタッチの著書である。薬学のかかえている問題も含め、日本の薬剤師教育をどのように考えたらよいかを示した好著である。
薬学教育者はもちろんのこと、薬剤師、薬学生、さらに、チーム医療で現に薬剤師と仕事を分かち合っている医師、看護婦、病院のコ・メディカル、また、これから薬学に進学を希望する高校生に是非とも一読していただきたい。


保健の科学43巻8月号 本体価格1,000円
巻頭のことば
健康の節目
豊川 裕之
前東邦大学教授
特集 漢法を知る
―中国医学の生薬療法と混同されやすいわが国・固有の生薬療法―和法 伊沢 凡人,他
漢法科学財団
用薬の発想 伊沢 凡人,他
漢法科学財団
漢法に科学性をもとめて―傷寒論の解読― 伊沢 凡人,他
漢法科学財団
針・灸概説 伊沢 凡人,他
漢法科学財団
連載 在宅看護
訪問看護ステーションの効果的運用の一事例 浅見 美千江
(社)石川県医療在宅ケア事業団訪問看護管理部
連載 栄養指導の現場から
要援護高齢者に対するホームヘルパーによる支援の実態 長澤 伸江
名古屋女子大学短期大学部
連載 海外情報
WHO関係 Weekly Epidemiology Recordより(14) 城川 美佳
東邦大学公衆衛生学教室
調査・研究
「健康」という語の起源とその流布について 八木  保
京都大学名誉教授



  

1. 『いのち』        柳田 邦夫 
8人の医師との対話。
「生と死」という言葉が、今の時代のキーワードになっている。
なぜ、いま「生と死」なのか。「生と死」とは、文字どおり、いかに生き、いかに死ぬかということなのだが、大事なことは、生と死を分離して考えるのではなく、死をさけられないものとしていしきしてこそ、一日一日、一刻一刻を密度濃く生きられるようになるとか、そういう生き方を真剣に探ってこそ、その日となりの死の美学を成就させることができるといった死生観、つまり生とひとつながりのものとしてとらえる視点である。患者にはそれぞれの人生の文脈がある。医療者には、専門的職業人としての歩みがある。医療とは、その交差点で作る作品。
2.化学の未来へ』     近畿化学協会 編
(前書き)
世紀末は激動の時といわれる。世界は情報化時代に突入し、大きな変革のうねりのなかにある。これまで化学は、物質の本質を分子レベルで解き、反応させ、新たな物質をつくりだすことによって衣料、住宅、医療などあらゆる面において、人類の生活を豊かにし、今日の繁栄に大きく寄与してきた。
ところが世紀末を迎えたいま、21世紀に向けて環境問題をはじめとして、資源、エネルギー、食料、人口問題、など人類の生存の根幹にかかわる難問が山積されている。これらの課題を解く鍵が、さらに進化した化学である。
3.『奪われし未来』   シーア・コルボーン 著
(Thing Green企画委員会) 
ぼくたちの先祖が有史以来、数千世紀にわたって引き継いできた青い星地球。
それがあと100年で壊れようとしている。なによりも大切なことは人間の文明が自然と調和し共存する道を探ること。ぼくたちに文明を抑制する勇気自然と共生する叡智があればこの美しい地球には未来があるだろう。
4.『「人間の時代」への眼差し』    柳田 邦夫 著
(あとがきより)
科学技術の発展は、人間に大きな福利をもたらすプラスの面がある一方で個人や社会に損害を与えるマイナスの面が、必ずといってよいほどある。そして、科学技術のひとり歩きを放置すると、そういうマイナスの面が拡大されていく危険がある。
20世紀末の現在は、マイナス面をかかえたまま肥大化した科学技術の 現況を見つめ直し、本来主人公であるべき人間にとって科学技術はどうあらねばならないかを原点に帰って考えるべき時期ではなかろうか。原点とは人間尊重だというのが私の考えである。そういう願望をこめて、私は21世紀を「人間の時代」と呼びたいのである。
5.『病になる、病が治るということ』    草風館   山下 剛 著
おのれの生命が輝き、そのことに満足してこそ、ストレスも病も、不幸も死の不安もなくなるのです。毎日毎日を充分燃焼し尽くすからこそ、きれいな灰になってゆけるのです・・・このように人を導けたら、私は医療人として本望です。」(本文より)
私の起源を信じて私の身と心をいつわらず精一杯になるべく、怒らぬことなるべく将来のことを心配せずになるべく、成り行きにまかせてなるべく、呑気になるべく陽気になるべく楽しみ喜び、なるべくにっこり笑うこと。
6.『新しい医療とは何か』    (NHKブックス)  永田勝太郎 著
ターミナルケア、ストレス病、副作用・・・。
従来の治療方法では対処できない問題の堆積を前に、これからの医療は、何を目指すべきか、現代医学の適応と限界を認識したうえで、伝統的東洋医学や心身医学の考え方をも取り入れ、
患者個々の、生命(いのち)の質の向上を図る「全人的医療」を提唱する。
7.『人は成熟するにつれて若くなる』  ヘルマン・ヘッセ 著
(本文より)
 
成熟するにつれて人はますます若くなるすべての人に当てはまるとはいえないけれど、私の場合はとにかくその通りなのだ。私は自分の少年時代の生活感情を心の底にずっと持ちつづけてきたし、私が成人になり、老人になることをいつも一種の喜劇と感じていたからである。」
8.『命をみつめて』             日野原 重明 著
人間の尊厳とはいったい何か。敬虔な宗教者としても知られるベテラン内科医が、病めるひととのふれあいを通して倍った人生への洞察。
 「現在の自分は、これまでに出会ったものすべての贈り物である。」
9.『埋もれたエイズ報告』 (NHK取材班)    三省堂   桜井 均 著
薬害エイズ事件の埋もれた部分を克明にたどるうちに筆者はHIV感染の途方もない広がりと意外な起源に気づいた。
(NHKの)93年入手資料と96年の厚生省公開資料の徹底検証から浮上した行政の「情報秘匿」と「不作為」の驚くべき連鎖。
10.『父からの手紙』             草風館  林 力 著
数多くの患者と家族を屈辱の境遇に追い込んだ、この「らい予防法」という人権侵害政策を誰が作ったのか。現今のHIV(エイズ)に対する偏見をつくりだす共通の土壌がここにある。
部落解放運動に励まされて「息子宣言」をした著者が、弧絶農地に死んだ、父の手紙を読みながら、近代日本が犯し続け今なお、根強い偏見が残る日本社会のハンセン病に対する差別と迫害の歴史を徹底的に検証する。
11.『からだに効く食べもの』        田中 孝治 著
身近にある野菜やくだもの、魚介類などを「くすり」として、活用してもらうために、その栄養や成分、効用などをわかりやすく解説。
12.『高原の音楽譜』      恒文社    手塚 宗求 著
古き良きじだいの山小屋の青春から現在にいたるまで、40年に及ぼうとする山暮らしのおりふしに耳にし、心にふれたメロディーや楽曲の調べにのせて、高原の山小屋の主人がつづった人生の音楽譜である。
13.『ふれ愛やまある記』    近代文芸者     小野 清 著
山が大好きな小野さんの、登山日記! 
登山仲間の心がほのぼのと、読む人たちに伝わってくる。
14.『医療不信』              東 栄一 著
日本の社会保障や医療を考えた時、はたして過去の教訓がいかされているかと疑問視せざるを得ない。具体的な説明や情報の開示のないまま進められようとしている。介護保険もそうだし、社会ニーズや国民の応分の負担を名目に医療保険を財政破綻まで追い込んだ医療保険行政の不手際、大きな社会問題となった薬害エイズ事件は改めて薬務行政の本質を問い直している。こうした事態を見るにつけ「この国はやはり病んでいる」と見ざるを得ないのである。 
15.『自閉症だったわたしへ』     ドナ・ウイリアムズ 著
ある若い女性が自分の子供時代について、つずった勇気あふれる実話。
自閉症
であることをはじめ、数々の試練を乗り越え、深い思慮と洞察力を身につけた女性に成長した。その自らの行動を冷静に、しかも情感豊かに振り返り、みずみずしい文章で描いている。